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設計者・部品選定者なら知っておきたい【スライド丁番】の基礎知識

設計者・部品選定者なら知っておきたい【スライド丁番】の基礎知識

設計者・部品選定者なら知っておきたい
【スライド丁番】の基礎知識

さまざまな家具や装置の開き戸に使用されるスライド丁番。
種類や選び方などの基礎知識から金物メーカースガツネならではのユニークなスライド丁番をご紹介します。

スライド丁番・スライドヒンジとは?

スライド丁番とは、開き戸の内側に取り付けて扉を開閉するための部品です。スライド蝶番、スライドヒンジとも呼ばれます。

表から丁番が見えない

表から丁番が見えない

連続した扉に使用できる

連続した扉に使用できる

着脱・位置調整が簡単

着脱・位置調整が簡単

開き戸を開閉する部品は平蝶番などもありますが、それらと比較して大きく3点の違いがあります。
まず内側に取り付けるため扉を閉じた時に丁番が表から見えず、スッキリしたデザインの扉にできます。近年流行となっているミニマル・ノイズレスな空間づくりにマッチした丁番です。

また平蝶番が一軸なのに対しスライド蝶番は多軸のため、扉が少し内側に入り込みながら開く独特の軌跡を描きます。
このため、隣に壁がある場所や扉が連続して並んでいる場所にも使用できます

さらに最近のスライド丁番はワンタッチで取り付け・取り外しできるものが主流となっている他、扉が取り付いたまま前後や左右などの位置調整ができ、施工が簡単です。

スライド丁番の構成部品

スライド丁番の構成部品は、下記の通りです。

  • 1:   本体
  • 2:   マウンティングプレート(取付座金と呼ばれることもあります)

本体は扉に、マウンティングプレート(取付座金)はキャビネットの側板に取り付けて使用します。※1
本体をマウンティングプレートに押し込むだけで扉をキャビネットに吊り込むことができます。また、本体のレバーを持ち上げると本体とマウンティングプレートが外れ、扉を取り外せます。※2

※1 本体とマウンティングプレートは同じシリーズで組み合わせてください。
※2 ワンタッチ取付が可能な製品の場合です。

動画:オリンピア スライド丁番 360の着脱方法

スライド丁番の種類

扉の材質

木扉

一般的なスライド丁番です。

ガラス扉

木扉用のスライド丁番にガラス扉用のフェイスプレートを組み合わせることでガラス扉に使用できます。(側板は木です)
オリンピアシリーズやJ95シリーズなど一部のスライド丁番が対応しています。

板金扉

スチールロッカーなどの板金筐体で使用することも可能です。

かぶせ量

スライド丁番のかぶせ量とは側板と扉が重なっている部分のことです。かぶせ代やかぶせ寸法と呼ばれることもあります。
大きく下記の3タイプに分けられます。

全かぶせ・アウトセット

スライド丁番の全かぶせとは、側板の前に扉がほぼ全面かぶさる仕様です。アウトセットとも呼ばれます。
正面から見た時に側板がほぼ見えないため、スッキリしたデザインの家具や装置にできます。

インセット

スライド丁番のインセットとは、扉が側板の内側に納まる仕様です。
全かぶせと異なり閉まった時に扉が側板に当たらず、丁番単体では90°よりやや内側まで閉まるため、戸先が内側に入り込まないように別途戸当たりを付けることをおすすめします。

半かぶせ

スライド丁番の半かぶせとは、扉が側板の一部分にかぶさる仕様です。
連続した扉におすすめの仕様で、図の点線のように隣にも扉がある場合に側板の残りの部分に戸先が当たるため、別途戸当たりを設ける必要がありません。

弊社のカタログで「適応かぶせ量 15〜19mm(カット量 5mmの時)」とは右図の状態を指します。15〜19mmと記載しているのは、かぶせ量調整ねじを回すことでかぶせ量を-4mmまで減らせるためです。
カット量とは扉の端からカップの加工穴までの距離のことです。(カット量 5mmの時)と限定しているのは、扉の端から穴までの距離が減ると、スライド丁番の位置は変わらないため扉が左に移動することになりかぶせ量が減るためです。対応可能なカット量はカタログに記載しますので、ご参照ください。

カップ径と掘り込み深さの説明はこちら

開き角度

90°〜105°開き

標準的な開き角度です。

85°開き

吊り元側のすぐ近くに壁がある場合や、隣に別の家具や装置がある場合など、標準的な開き角度では扉やつまみが当たってしまう場所におすすめです。
一部の製品には、標準的な開き角度のスライド丁番を85°開きにできる後付けパーツもあります。

140°〜160°開き
(広角度開き)

大きく開くことで、収納物を出し入れする時に扉が邪魔にならない開き角度です。

扉の動き

スライド丁番は、種類によって扉の動きが変わります。代表的な4つの動きを紹介します。

ソフトクローズ:ダンパー内蔵

ソフトクローズとは、扉の閉まり際がゆっくり静かに閉じる動きです。バタンという音を防ぎ、動きにも高級感が生まれます。
ソフトクローズさせるには、ダンパー内蔵タイプのスライド丁番を選んでください。スピードを調節できるタイプもあります。
なおスライド丁番は1枚の扉に対して2個以上取り付けますが、全てダンパー内蔵タイプにすると閉まるスピードが遅くなり過ぎてしまうことがあります。一部の製品はいくつダンパー内蔵にすれば良いか目安を公開しているので、参考にしてください。

プッシュオープン:オープンタイプ

オープンタイプのスライド丁番とは、開く方向に力が働くばねが内蔵されたタイプのことです。
プッシュラッチと併用することで、扉を押して開くプッシュオープンの動きにできます。押して開けられるため、つまみやハンドルのない扉にできます。

閉じた状態を保持する:キャッチ付き

キャッチ付きのスライド丁番とは、ばねが内蔵されたタイプのことです。ばねが扉を引き込むためある角度から扉が自動的に閉まります。また、扉が閉じた状態を保持できます。
全てのスライド丁番をキャッチ付きにすると扉の閉まる勢いが強くなりすぎることがあります。その場合はキャッチ無しのスライド丁番と併用することで、キャッチ付きの個数が減ってキャッチカを弱められ、閉まる勢いを弱くできます。

閉じた状態を保持しない:キャッチ無し

キャッチ無しのスライド丁番とは、ばねがないタイプのことです。扉が自動的に閉まることがなく、閉じた状態も保持できません。扉が閉じた状態を保ちたい場合は、キャッチ付きのスライド丁番を使用するか、キャッチ無しのスライド丁番を取り付けた扉に別途マグネットキャッチなどを併用してください。

スライド丁番の色

シルバー

一般的なスライド丁番の色です。

ブラック

一部のスライド丁番や取付座金にはブラック色があります。
取り付けるキャビネットや筐体の色に合わせてお選びください。

スライド丁番の選び方・設計時のポイント

STEP1:スライド丁番の種類を選ぶ

上記の「スライド丁番の種類」を参考に、スライド丁番の本体を選んでください。
なお弊社WEBサイト スガツネットの「絞り込み検索」を使用すると、「開き角度」や「かぶせ量」などをチェックボックスで選択するだけで、ご希望の仕様のスライド丁番を誰でも簡単に探すことができます。ぜひご利用ください。

また扉1枚当たりに使用するスライド丁番の数は、扉のサイズや重さによって異なります。こちらをご参照ください。

STEP2:マウンティングプレートを選ぶ

STEP1で選んだスライド丁番本体と同じシリーズの中から選んでください。

シリーズによってはねじの取付穴が2つ穴、3つ穴、4つ穴の3種類を用意しています。
2つ穴は細長い形状でスッキリした納まりになります。3つ穴と4つ穴は取付強度の違いです。大きな扉や重い扉の場合は4つ穴タイプをお選びください。

またシリーズによっては、厚さが+2mm、+5mmのように厚くなっているマウンティングプレートもあり、かぶせ量を減らしたい時に使用します。
詳細は「扉の位置の調整方法」をご覧ください。

STEP3:必要に応じてオプション品を選ぶ

調整・取付ねじを隠すカバー、扉の開き角度を85°前後に規制する開き止めパーツなどのオプション品をご用意しています。
こちらもSTEP1で選んだスライド丁番本体と同じシリーズの中から選んでください。

設計時のポイント

スライド丁番を使用した家具や什器を設計する時には、オープニングクリアランス(O.C)を考慮する必要があります。
オープニングクリアランス(O.C)とは扉を開閉する時に必要な隙間のことで、これを確保しないと扉がぶつかって開かなくなってしまうため、とても重要です。

右の軌跡図をご覧ください。
扉が閉じた状態と開けている途中の状態では、扉の吊元(スライド丁番が取り付いている側)の端の位置が異なります。扉を開けている途中の方が、閉じた時よりも扉がはみ出てしまうのです。
つまり、一番飛び出した状態でも扉がぶつからないように、吊元側に隙間を設けておく必要があるのです。

同様に扉の先端にもオープニングクリアランスは存在します。

オープニングクリアランスは扉厚とカット量によっても変化します。
例えば図の場合、扉厚が20mmでカット量が5mmの場合は扉吊元のオープニングクリアランスは1.8mmになります。

この表は各スライド丁番のカタログに掲載していますので、設計される際はご使用のスライド丁番のページをご確認ください。

扉加工:カップ径と掘り込み深さ

スライド丁番の本体を扉に取り付けるには、写真のような穴加工が必要です。穴の直径と深さはスライド丁番のカップの直径(カップ径)と深さ(カップ深さ)によって決まります。
加工寸法はカタログの各製品ページに掲載していますのでご参照ください。

扉の位置の調整方法

多くのスライド丁番は、扉の前後・上下・左右(かぶせ量)の調整ができます。
当社の代表的なスライド丁番は、調整ねじをドライバーで回すだけで、扉を取り付けた後でも調整できます。

かぶせ量の調整を調整ねじ以外で行う方法

ディスタンスプレートを入れる方法

ディスタンスプレートを図のように座金(マウンティングプレート)の下に挟むことで、かぶせ量をプレートの厚み分だけ少なくできます。
例えば2mm厚のディスタンスプレートを1枚入れた場合はかぶせ量が2mm少なく、2枚入れた場合は4mm少なくなります。

マウンティングプレートを厚いものに変更する方法

上記のディスタンスプレートの追加と仕組みは似ていますが、マウンティングプレートを厚いものに変えることでかぶせ量を少なくできます。
例えば標準厚から+5mm厚に変更した場合は、かぶせ量が5mm少なくなります。

スライド丁番の代表製品

オリンピア 360シリーズ

ソフトクローズを5段階で調節できます。
JIS規格(システムキッチンの構成材JISA4420)で求められている開閉試験回数は4万回ですが、オリンピアシリーズはそれを遥かに超える20万回の開閉テストをクリアしています。長く安心してお使いいただけます。

J95シリーズ

重量用のため、従来はスライド丁番5個で吊っていたような重い扉や大きな扉も2個で取り付けできます。
見た目がスッキリするだけでなく、取付時間も短縮できます。

J160シリーズ

重量用かつ広角度開きのスライド丁番です。
大きな扉は物の出し入れの際に扉を開いたままの状態にすると、手前に大きく開くため扉が邪魔になりがちですが、J160シリーズは広角度に開くため邪魔になりません。
ソフトクローズ機能付きです。

ステンレス鋼製 100シリーズ

オールステンレス鋼製のスライド丁番です。
耐食性に優れているため、厨房機器や船舶におすすめです。

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